教授あいさつ
Message
適切な時と人を得てこそ、
道(医学)は尽きることなく
広がっていく
教授・診療部長岩瀬 哲
「時至り人叶いて道、無窮に被らしむ」私はこの空海の言葉を「適切な時と人を得てこそ、道(医学)は尽きることなく広がっていく」と解釈し、座右の銘としています。わが国は高齢化が進み世界一の長寿国となりましたが、その人口動態に医療が附いて行けない状態が続いています。医学は多くの疾患に対し有効な治療を開発し、日々エビデンスが創出されています。しかしながら、多くの疾患を抱える高齢者の医療においてはエビデンスが不足しています。
いま求められている医療が「地域包括ケアの充実」であることは云うまでもありませんが、アカデミアが推進しているとは云えない状況です。臨床医学の各専門領域は、ひとつの疾患の克服を目指しており、根治できない時の身体的精神的ケアについては緩和医療に委ねられています。しかしながら、複数の疾患を抱える高齢者に必要な医療は複雑系であり、専門医療から緩和医療へのバトンタッチでは解決できません。この複雑系医療におけるエビデンスの創出は、探索試験から検証試験という従来の科学手法のみでは難しいことが歴史的にも示唆されており、これからの時代は様々な臨床情報からなるビックデータを扱い、機械学習を始めとするデータ解析手法を駆使し、無作為化比較試験と組み合わせて行くというような新しい科学手法を開発せねばならないと考えます。
当診療科は、地域高齢者の救急搬送を低減するシステムの開発を研究テーマの一つとしています。そして、それぞれの構成員は自分の専門性を活かし、AMED(日本医療研究開発機構)や科研費(日本学術振興会)課題の受託を目指しています。また、専従医の構成員には大学院へ進学(社会人入学)を推奨し、理研(国立研究開発法人理化学研究所)や医科研(東京大学医科学研究所)に依頼して、研究指導を受ける体制を構築しています。また、専従医の専門医取得については、随時個別の相談を行い、学内学外を問わず、専門医プログラムへの参加を支援、基本領域の専門医取得と続くサブスペシャリティ領域の専門医取得を目指して貰っています。このように当診療科では個々が研究課題を持ち、研究と臨床をバランスよく研鑽できる環境作りをモットーにしています。そして、若い医師のキャリアパスの策定を最も重要な課題と考えています。また、医学教育を構成員全員で考える機会を設け、当診療科の教育ポリシーを常に検討しています。
沿革
History-
2017年11月
緩和医療科初代運営責任者(教授)に岩瀬 哲が就任
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2018年4月
緩和ケアチーム結成/活動開始
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2019年4月
救急科/中毒科と臨床合併
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2019年5月
ロコモ・フレイル外来新設
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2020年4月
緩和科・救急科・中毒科共有ベッド5床運営
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2021年5月
緩和科・救急科・中毒科共有ベッド10床運営
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2022年4月
認知症ケアチーム・せん妄予防チーム結成/活動開始