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医局情報発信コーナー

白衣の羽〜医療の未来への旅〜
2024年12月27日

医師として、研究者として:2024年の振り返り

カテゴリ: 日々の活動報告

久しぶりの投稿になります。埼玉医科大学 緩和医療科の山本です。
気づけば12月の終わりになり、年越しが目前に迫っています。この時期になるとどうしても1年を振り返り、ノスタルジックな気持ちになります。本日は私事ではありますが、この1年間を振り返る機会にさせていただきたいと思います。

3月までは沖縄で研修医として働き、4月からは母校である埼玉医科大学に戻りました。6年間住んだ場所ということもあり、不安はありませんでしたが、学生時代とは全く異なる生活が待っていました。大きな変化は3つありました。1つ目は市中病院から大学病院への転職、2つ目は研修医からより責任の重い担当医になったこと、3つ目は右も左も分からない研究の開始です。この3つの新しい挑戦が重なったため、4月から6月頃までは予想以上に苦しい時期が続きました。やっと新しい環境に慣れ始めた矢先、希望していた東京大学 救急・集中治療科への出向(7,8月)が決まりました。上級医である岩崎先生のご紹介で研修させていただきましたが、私は東大とはなんの縁もなく、知り合いもほとんどいない状況でした。埼玉医大に戻ってきたときよりも状況としては悪く、同じ大学とはいえどもシステムやルールは全く異なっていたため、本当に0からのスタートでした。東大での生活については以前投稿しましたので詳細は割愛しますが、片道2時間の通勤や知り合いのいない環境での研修は大変でした。それでも、東大での上級医や同期、研修医の先生方との日々は本当に刺激的で、「このままではいけない!」と奮起する2ヶ月間でした。振り返ることでその気持ちを再確認しました。振り返りは大切ですね。
年間を通して最も苦労したのは、やはり研究でした。学生時代に岩瀬教授から「優れた臨床医であるためには研究は不可欠」という言葉を聞き、それが心に残っていました。沖縄での臨床漬けの日々でもその言葉は忘れられず、軽い気持ちで「まずは研究をやってみよう」と、専攻医プログラムに乗らず2024年4月から緩和医療科に所属しました。
しかし、すぐに私の考えは甘かったと反省することになりました。緩和医療科の特性上、入院してくる患者さんの多くが末期がんで急変することが多く、その都度治療継続するかしないか、最期はどこで迎えるかなど、本人とご家族と話し合う時間が必要でした。また話し合いは状況が変わるたびに行われるため、それまでの経過を知っている担当医でないと方針の決定が難しく引き継ぎは困難でした。そのため臨床業務だけで連日遅くまで帰れず、研究に時間を割けない日々が続きました。それでも、隙間時間を見つけて研究に取り組んで来ました。ただスキマ時間で研究をやっていたとはいえ、臨床が日常の9割以上を占めておりほとんど研究の勉強ができておらず、4月に思い描いていた生活とのギャップに絶望していました。ちょうどそのタイミングで、もともと行く予定だった理化学研究所への登録が完了し、9月後半から週に1日理化学研究所にいくことができるようになりました。同僚の皆さんのご協力のもと、臨床を一切しない日が週に一度でき、その日は1日研究に費やすことができるようになりました。それだけではなく、理化学研究所に行くとそこで働く研究者の方たちとお話をする機会が自然と生まれ、それぞれの研究についてのお話や研究で困っていることやプログラミングの勉強の仕方などまで教えていただき、行くだけで本当に刺激になりました。またそれと同時に一週間すべて研究に時間を使っている人たちがいることも目の当たりにし、週一しか研究に集中できていない自分が結果を出すことがどれだけ大変なことか想像して気が引き締まりました。
確かに研究は大変でしたが、一番成長を感じることができたのもまた研究でした。研究は1人ではできません。上司、同僚、事務方、他施設協力機関、小さな研究でも関わる人は大勢おり、それぞれとうまくやっていく必要があることを学びました。そこにはコミュニケーション力だけでなく、マネジメント力など総合力が求められます。研究の準備をする過程で自然とその能力が高まったように感じます。また、研究は短いものもありますが、それでも数年規模でやるものが多く中長期的な計画の立案が必要です。計画性を持って物事を遂行することがとても苦手な私にとっては本当に辛い日々で上司に何度も怒られましたが、4月と比べるとだいぶ変わったと思います(ついこの間も怒られましたが笑)。

まだまだ未熟ではありますが、この1年はとても濃密で、成長を実感できた貴重な年でした。これもすべて支えてくださった皆さまのおかげです。今後ともよろしくお願いいたします。

 

(埼玉医科大学病院より遠景)

(理化学研究所からの風景)

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