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医局情報発信コーナー

白衣の羽〜医療の未来への旅〜
2025年09月25日

Computing in Cardiology 2025での研究発表

カテゴリ: 学会・研究会関連

こんにちは!
2025年9月14日から17日まで、ブラジル・サンパウロで開催された国際学会 Computing in Cardiology 2025 に参加してきました。私はその中で行われた国際コンペティション PhysioNet Challenge 2025(physionet2025) に参加し、その内容のポスター発表も現地で行ってきました。

PhysioNet Challenge は、世界中の研究者が同じ医療データを用いて解析手法を競い合う国際的なコンペティションで、毎年テーマが変わります。2025年のテーマは「心電図データからシャーガス病を診断・分類すること」でした。機械学習や深層学習を駆使して診断精度を高めることが目的であり、医療AIの発展に直結する取り組みです。

今回のテーマとなった シャーガス病 は、中南米を中心に流行している感染症で、トリパノソーマ・クルージ(Trypanosoma cruzi) という寄生虫が原因です。主にサシガメという昆虫を介して感染します。初期には症状が軽いため気づかれにくいのですが、数十年後に心筋症や不整脈を引き起こし、心不全や突然死につながることがあります。近年では、移民や輸血を通じて非流行地域である欧米や日本でも患者が報告されている感染症です。

PhysioNetがシャーガス病診断を課題とした意義は、この疾患が持つ「長期に潜伏し重篤な心疾患を引き起こす」という特徴にあります。心電図は非侵襲的かつ安価に得られる検査であり、もしAIを用いて早期の心電図変化からシャーガス病を検出できれば、流行地だけでなく世界中でスクリーニングに活用できる可能性があります。これは、国際的な公衆衛生上の課題に対し、AI技術を医療応用することで社会的インパクトをもたらす挑戦です。

今回の学会参加とPhysioNet Challengeへの挑戦を通じて、心電図解析の新たな可能性や、国際的な健康課題としてのシャーガス病の重要性について深く学ぶことができました。初めての国際学会発表ということで言語の壁を感じる場面もありましたが、その経験も含めて大きな学びとなりました。長時間の移動(片道約30時間)はさすがにハードでしたが、それ以上に得られたものは大きかったと感じています。

今後も「医療 × AI」の研究をさらに進め、医療現場に還元できる成果として社会に貢献していきたいと思います。

橋本雄太

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